「積極人生」とは?│園田天光光が実践した中村天風の教え

『岩戸開き』第27号の特集は「直観を磨く」

岩戸開き第27号の表紙画像

日本初の女性首相が誕生し、政治の世界で活躍する女性への関心が高まっています。女性が政治の道を歩むことが容易ではなかった時代に、その道を切り開いた先駆者がいました。戦後初の女性衆議院議員の一人、園田天光光(そのだ・てんこうこう、1919〜2015年)です。

96歳まで力強く生きた彼女を支えていたものは何だったのか。その人生をたどると、心の持ち方を重視した思想家・中村天風との出会いが浮かび上がります。10月22日発売の『岩戸開き 第27号』特集「直観を磨く」の連動記事第5回は、天光光の著書『女は胆力』第六章「本物を見極める胆の力」を手がかりに、天風の教えと直観について考えます。

なぜ13年も人生の師を探したのか

選挙の結果によって議席を失うこともある政治の世界。天光光は、先の見えない人生をどう生きればよいのか、心の拠り所となる師を求めていました。

夫の園田直(そのだ・すなお、1913〜1984年。衆議院議員。官房長官、外務大臣、厚生大臣を歴任)と結婚した際、二人は「お互いの人生の師を探そう」と話し合ったといいます。その後、さまざまな人物を訪ねて教えを求める日々が続きました。

やがて夫が、合気道の創始者・植芝盛平(うえしば・もりへい、1883〜1969年)の紹介で中村天風に会います。帰宅した夫は「やっと本物を見つけたぞ」と語りました。天光光も天風の話を聞きに行き、二人そろって天風会に入会します。著書によれば、出会いは1963(昭和38)年のことでした。

中村天風とは ― 時代を切り開いた人々の心の支え

中村天風(なかむら・てんぷう、1876〜1968年)は、心身の鍛錬を通して人生を切り開く道を説いた思想家・実践家です。若くして結核を患ったのち、インドでヨガの聖者に師事して悟りを得たとされ、帰国後の1919(大正8)年に心身統一法を広める活動を始めました。この活動が、のちの「天風会」につながっています。松下幸之助、稲盛和夫、宇野千代、大谷翔平など、天風の教えに影響を受けたとされる人物は、政財界から文化人、スポーツ選手まで幅広く知られています。

「力の誦句」が引き出す、内なる力

「積極人生」とは?│園田天光光が実践した中村天風の教え

天風が説いた「積極人生」は、単に行動的になることや、物事を前向きに考えることだけではありません。天光光は、その生き方を「楽しい、朗らかな、生き生きとした」心で日々を送ることとして受け止めていました。

彼女が実践していたのは、天風の教えを日常生活に取り入れることでした。朝には「今日一日、怒らず、恐れず、悲しまず、正直、親切、愉快に」と唱え、さらに「力の誦句」も繰り返したといいます。「私は力だ、力の結晶だ」という言葉を唱えることで、心の中に力強いイメージが生まれ、自分の内側から力が湧いてくるように感じたと振り返っています。

天風の教えは、知識として理解するだけでなく、言葉や身体の鍛錬を通して実践するものだったのです。

「胆力」とは何か ― 直観を信じ、本物を見極める力

天光光は、戦時中に二度、米軍の空襲から逃れた経験を持ちます。その体験もあり、人間の知識や科学だけでは説明しきれない何かがあると感じ、直観やひらめきを大切にしてきたといいます(著書では「直感」と表記)。

ただし、直観を信じることは、何でも無条件に受け入れることではありません。著書の章題が「本物を見極める胆の力」であることは象徴的です。自分の感覚を信じて一歩を踏み出すには、迷いや不安にのみ込まれない胆力が要る。一方で胆力とは、ただ強気になることではなく、物事を冷静に見極める力でもあるのでしょう。

当社ロングセラーにも通じる「心の持ち方」と直観

怒りや恐れに心を乱されず、冷静に本物を見極める。この姿勢は、直観をテーマにした当社のロングセラーでも語られています。

『あるがままに生きる』(足立幸子 著)は、直観の〔観〕とは心の目で見ることであり、心眼が開かれるとは〔物事の本質〕が見えるようになることだと説明したうえで、こう述べています。

だいたい情に振り回されるから物事の本質を見失って、見えるものも見えなくなってしまうのです。

そして、《情》に振り回されないと物事の本質が見えてきて、何が起こっても動じなくなる、と語られています。

『波動の法則』(足立育朗 著)は、「直観」が間違えるのは、実際には自分の「顕在意識」での希望的観測を「直観」と思ってしまっている場合だと述べ、大切なこととして次のように伝えています。

正確な直観を得るためには、常にできる限り自分自身が全てに対して謙虚であること、つまり、自我の振動波が限りなく少なくなるように心がけることが肝要だということです。

教えの体系はそれぞれ異なりますが、心を整えることと、直観を見極めることを切り離さずに考えている点は、天光光が受け止めた天風の教えを読み解くうえでもヒントになりそうです。

『岩戸開き』第27号で、中村天風の教えをさらに深く

『岩戸開き 第27号』特集「直観を磨く」では、中村天風の教えから、直観を磨くための心のつくり方を取り上げた記事を掲載しています。怒りや不安、雑念に心を支配されず、安定打坐法などを通して心を静めること。直観を磨くとは、未来を予知する特別な能力を求めることではなく、心のざわめきを鎮め、内なる気づきを行動につなげていくことだ――。天光光の歩みとあわせて読むと、天風の教えがより立体的に見えてくるはずです。

まとめ

園田天光光は、13年にわたって人生の師を探し、中村天風と出会いました。「積極人生」の教えを日々の言葉や心身の鍛錬に取り入れ、直観を大切にしながらも、物事を見極める姿勢を忘れませんでした。不安にとらわれず、自分の内なる力を信じて歩む。その生き方は、変化の激しい時代に直観を磨きたい私たちにも、多くのヒントを与えてくれます。

(岩戸開き編集部)

参考文献

園田天光光『女は胆力』(学研M文庫、2013年/平凡社、2008年刊の再刊)

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