
『岩戸開き』第27号の特集は「直観を磨く」

初めて会った人なのに、なぜか親しみを感じる。いつもと同じ道なのに、今日は何か違う気がする――。そんな経験はありませんか。理由をうまく説明できないまま、何かを感じ取る。こうした感覚は「直観」と呼ばれます。
10月22日発売の『岩戸開き 第27号』の特集は「直観を磨く」。連動記事の第3回となる今回は、「虫の知らせ」や直観を、科学の視点から見つめてみます。
生成AIは「ひらめく」ことができる?
生成AIは、大量のデータから学習したパターンなどをもとに、入力された指示に応じて文章や画像などを生み出します。人間が思いつかなかったような組み合わせを提案することもあり、創造的な活動を支援する存在として注目されています。ただし、AIが新しいアイデアを出せることと、人間と同じような内面的体験をしていることは別です。
一般的な対話型生成AIは、人間のように身体を通じて日常生活を経験し、その体験を感情や記憶として積み重ねているわけではありません。一方、人間のひらめきには、知識や経験だけでなく、感情や身体の感覚、その人が大切にしている価値観なども関わります。
人間の経験から生まれる瞬時の判断
例えば、長年料理をしている人は、食材の色や香りから状態の変化を察知することがあります。経験豊富な編集者なら、企画を聞いた瞬間に「この切り口なら読者に届きそうだ」と感じることもあるでしょう。本人がすべてを言葉で説明できなくても、これまでの経験が瞬時の判断に役立つ場合があるのです。
一方、経験に頼り過ぎると、過去の成功体験にとらわれてしまうこともあります。以前はうまくいった方法が、今の状況にも通用するとは限りません。直観を生かすには、経験を大切にしながらも、結果を振り返り、必要に応じて考えを修正することが重要です。
AIと人間、それぞれの得意分野と使い分け

AIは、大量の情報を整理したり、複数のアイデアを短時間で提示したりすることを得意としています。一方、人間は、現場での経験や人との関わり、自分自身の価値観などを踏まえて、物事の意味を考えます。
例えば、新商品の企画を考えるとき、AIに依頼すれば多くの案が得られるでしょう。しかし、どの案が本当に必要とされているのか、誰にどのような影響を与えるのかを考えるには、現場の状況や人々の思いを理解することも必要です。
もちろん、人間の判断がいつも正しいわけではありません。人間の直観が思い込みに左右されることもあります。だからこそ、AIか人間かの二者択一ではなく、それぞれの得意分野を生かすことが大切です。AIの提案を参考にしながら、人間が目的を定め、内容を確かめ、最終的な判断をする。その組み合わせが、より良い結果につながる可能性があります。
少し離れるとひらめく?「インキュベーション」という考え方
考え続けても答えが見つからなかったのに、散歩をしているときや、お風呂に入っているときに、突然アイデアが浮かんだ――。そんな経験はありませんか。
心理学では、問題をいったん脇に置く時間を「インキュベーション(孵化)期間」と呼びます。これまでの研究をまとめて分析した論文では、この期間を設けることで問題解決が促される効果が確認されています。また、ただ休むよりも、負担の軽い別の作業をしているほうが効果が大きい場合があることも報告されています(注1)。
もちろん、休めば必ずひらめくわけではありません。同じ論文でも、効果が見られなかった研究があることや、課題の種類や条件によって効果が変わることが示されています。それでも、考えが行き詰まったときに少し距離を置いてみることは、試す価値のある方法といえそうです。
実は、連動記事でご紹介したロングセラーにも、よく似た場面が描かれています。『波動の法則』(足立育朗 著)は、行き詰まって散歩やお風呂などでひと休みし、思考を停止している状態について、「そして、考えるのを止めてしまっているその時に、『あっ、これだ』という気づきの『閃き』や『直観』を経験したことはどなたでもあると思うのです」と述べています。『あるがままに生きる』(足立幸子 著)でも、答えは頭がボーッとしてリラックスしている時に返ってくる、と語られ、お風呂や電車の吊り革につかまっている時が例に挙げられています。
AIを使うときも同じです。いくつかの案を出してもらったら、すぐに決めず、少し時間を置いて自分の考えを整理してみる。そうすることで、最初には気づかなかった視点が見つかるかもしれません。
AI時代の直観を生かす3つの方法
① AIに聞く前に、自分の考えを書き出す
まずは、自分がどう感じているのか、何を大切にしたいのかを整理してみましょう。その後でAIの提案と比較すると、自分の考えを深めやすくなります。
② AIの回答をうのみにしない
AIは、もっともらしい回答をしても、誤った情報を含むことがあります。重要な判断では、信頼できる資料や専門家の意見を確認しましょう。「何か違う」と感じたら、その理由を確かめることも大切です。
③ 考える時間と、離れる時間をつくる
情報を集め続けるだけでなく、散歩をしたり、別の作業をしたりして、いったん問題から離れてみましょう。時間を置いて考えることで、新しい発想が生まれる場合があります。
まとめ ― AIが進歩する時代だからこそ、直観を磨く
AIは、大量のデータから学習したパターンなどをもとに、文章やアイデアを生み出します。一方、人間の直観には、経験や感情、身体の感覚、価値観などが関わっています。AIの能力が進歩しても、その回答をどう受け止め、何を選び、どのような未来を目指すのかを決めるのは人間です。AIに任せられることは活用しながら、自分の感覚や考えも大切にする。それが、これからの時代に求められる姿勢ではないでしょうか。
『岩戸開き 第27号』特集「直観を磨く」では、社会心理学者の八木龍平さんをはじめ、ネドじゅんさん、はせくらみゆきさん、ジュリアン・シャムルワさん、並木良和さん、野中鉄也さんら、さまざまな立場のスペシャリストが、直観と、直観を目覚めさせる方法について語っています。AI時代の直観をさらに深めたい方は、ぜひ誌面を手に取ってみてください。
- 『岩戸開き 第27号』(2026年10月22日発売)
- 連動記事 第1回:足立幸子『あるがままに生きる』に学ぶ、直観の磨き方
- 連動記事 第2回:足立育朗『波動の法則』に学ぶ、直観を磨くための基本
- 連動記事 第3回:直観はなぜ当たるのか? ―「虫の知らせ」を科学の視点で読み解く
(岩戸開き編集部)
注
(注1)Sio, U. N., & Ormerod, T. C. "Does incubation enhance problem solving? A meta-analytic review." Psychological Bulletin, 2009.












